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序にちゃんと口元に付いていた粉を取り身体を離すと、宮村の頬は赤く染まっていた。
「可愛い」
ハグをするように抱き寄せ、軽く頭を撫でる。
「――何でこう、恥ずかしい事を平気でするかな?」
言っている事は怒っているようにも取れるが、その表情は満更でもない。
だからこそ、たまに不意を衝いてこういう事をしたくなるのだが。
運転席に身体を戻し、エアコンのモードを変える。
「つい――」
「…………」
だんだんと窓ガラスの曇りが取れていく。
道路からはきっちり死角になっている上に、さっきまでのガラスの曇り具合。
さすがにそれが無ければ、していない。
「続きは後でゆっくりと」
宮村が頬を紅潮させたまま小さく頷いたのを確認し、車を出した。
見慣れた景色が白く染まり、異様に寒くても――こんな事も有るから悪くないと思える。
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