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エンジン音が響き、決して静かとは言えない。 そんな車内で前と後ろで話そうとすると、互いに聞き取りづらい。 必然的にこういう体勢になってくるが、運転席の背もたれに顎を乗せることは無いだろう。 「どうせなら、運転してみりゃ良いのに。ペーパードライバーなんだから」 「だから嫌なんじゃん。何年も乗ってないし」 信号で止まり、顔を見てみると明らかに不満げな表情を浮かべている。 「――手取り足取り教えるから。今は大人しく座っとけ」 「運転で手取り足取り教えられる事も無いと思うんだけど……」 バックミラー越しには伸び切ったシートベルトが収まる様が映る。 シートベルトを伸ばした張本人の宮村は口を尖らせ少し不満、というよりも不安気にも見える表情を窓の外に向けている。 そのうちにラジオから流れてきた流行りの歌を口ずさみ始めていた。
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