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手際良く商品を用意し、会計を済ませる。 「こんな寒い日に、ありがとうございます。これ、旦那さんと1つずつ」  そう言って手渡されたのは抹茶味のチョコレートの試供品。 思いがけない一言に、心臓の鼓動が早くなる。 「……どうも」 「ご馳走様です」  買ったものを手に持ち、そのうえ試供品まで貰って満足この上ない表情をしている宮村に対して、今の俺はどんな表情をしているのだろう。 ガラスの曇っている扉を開け、外に出た。 「――”旦那さん”だって。そんな風に見えるのかな?」  驚いた様子もなく、悪気も全く無い表情。 確かに、結婚していても全く可笑しくは無い年齢。 宮村もそう見られる事が嫌では無い事が分かっただけでも、収穫は有ったと思うべきか。
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