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オブジェクトの全貌を眺めていると、
上からご機嫌斜めの声が少年の耳に届く。
「おそい」
声のする方に視線を向けると、
そこには若干15歳ほどの少女が整備用の足場に座り、
退屈そうに足をばたつかせていた。
彼女の名前は『ケイミー=オールコック』。
夕日のような赤色の髪は腰ぐらいまで伸ばしており、
前髪は左右にわけて髪留めで固定してある。
体つきは非常に華奢で、
はっきりいって軍隊には相応しくない。
しかし、彼女はこの軍隊にはなくてはならない存在なのだ。
なぜなら、彼女は“オブジェクトを操縦するために改造を施された”、
貴重な『エリート』と呼ばれるパイロットなのだから……。
そのため、彼女が着ているのは他の軍服とは違い鮮やかな赤色を基調として、
首から下を全て覆うぴったりとした水着のようなスーツだ。
ただ、よく見ると肩や手首などにはチャックのようなものがついており、
このチャックを開け閉めすることで着脱しやすくしているようだ。
また、腰には金属でできたスカートのようなものをつけており、
胸部は鎧のように特殊合金で覆われている。
まだ幼さの消えない顔は不機嫌そうに頬を膨らませ、
「レイヴン、ちこくだよ!」
「まだ二分ぐらいだろ。
相変わらず時間に厳しいな、ケイミー」
これでも忙しいんだよ、
とレイヴンがため息をついていると、
ケイミーは整備用の足場から舞うようにレイヴンの前に降り立った。
「レイヴンがこないと話しあいてがいないから、
たいくつなんだもん」
「……ったく、
ワガママなお嬢様だな」
やれやれ、とレイヴンは苦笑いを浮かべながらため息をつく。
「それより、身体の調子はどうだ?
何か違和感があるならすぐに言えよ?」
レイヴンの問いにケイミーは首を横に振る。
「とくになにもないよ」
「そうか、なら大丈夫だな」
レイヴンはそう言って微笑みかけると、
ケイミーを連れて廊下を進み、とある部屋へと入っていく。
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