立場の違う幼なじみ

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床や壁、天井さえも鉄板でできた長い廊下を、 迷彩柄の軍服を身にまとった『レイヴン=オーガスト』という一人の少年が歩いていた。 黒よりも黒い漆黒の髪に、 血のように真っ赤な眼をキョロキョロとさせているその顔からは、 幼さを残しながらも大人に成長しているのがうかがえる。 服装からわかるとおり、彼は軍人だ。 ただ、彼の仕事は戦場で銃を乱射することではない。 というより、今の時代は最新の重火器を背負った軍人が何人戦場に足を踏み入れたところで、 それほど戦績に影響はないだろう。 ――『オブジェクト』 東国の一国家が作り上げた、 全長50メートル以上、主砲の長さまで含めるとその二倍はゆうに越え、 なのに動きはプロボクサーのフットワーク並みに俊敏だという化け物だ。 このオブジェクトの手にかかれば、 人間が扱える重火器など豆鉄砲以下。 記録によれば、 核ミサイルを二発受けても動きを止めなかったらしい。 なら彼の仕事は何なのか……、 それはオブジェクトの設計だ。 しかし、今はその仕事を中断して『とある人』と待ち合わせをしている場所へと向かうべく、 鉄板で囲まれた廊下歩いている。 しばらくして廊下を抜けると、 一際巨大な空間に出た。 そして、その巨大な空間にたたずむ無視など不可能な存在。 それが少年の所属する『資本企業』――経済と財産を最も重んじている資本主義国家――のオブジェクト『クラリッサ』だ。 また、レイヴンが初めて設計し、製造された自信作でもある。 直径五十メートルに及ぶ球体状の本体から、 まるでアメンボのように六本の脚が伸びている。 この脚先からは自身の巨体を浮かすほどの膨大な静電気が発生し、 また一瞬だけ地面を蹴ることでまさにアメンボのように滑って移動することができるのだ。 主砲となるのは、自由に動く四本のアームにそれぞれ繋がった二十メートル級の巨大な高出力レールガン、 そして主砲とまではいかないものの、球体の左右から前方に向かって備え付けられている十メートル級の低出力レールガンが二本存在し、 副砲レベルのコイルガンやレーザー砲などに至ってはまるでハリネズミのように球体全体に備え付けられている。
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