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携帯の着信音で、不意に目が覚めてしまった。
枕元で鳴り響く携帯を手に取り、ディスプレイを見ると、“非通知”の三文字。
「今何時だと思ってんだ……」
携帯には午前二時三十分と表示されている。
今日も仕事だっていうのに、全くついてない。
しかも非通知となると、何処かの業者か何かに違いない。
……良い度胸してやがる。
俺は一分間様子を見てみたが、電話が切れる気配がしなかったので、仕方なく電話に出た。
『わた――――』
「もしもし、何処の業者か知らねーが、夜中に掛けてくるとか非常識にもほどがあるだろ!」
言ってやった。
向こうが何か言い出す前に言ってやった。
なんたって、俺の怒りは大爆発なうだ。
俺の睡眠を邪魔したのが運の尽きだったな!
…………。
あれ?
反応がない。
もしかして、業者じゃなかったのか?
「あの、もしもし……?」
『あ、あの……私……め、メリーさんです……。いい今、あなたのお家……お家の前にいるんです!』
……メリーさん?
俺は呆気に取られてしまった。
そして、真っ先に思いついたのが、都市伝説の“メリーさんの電話”という話であった。
これは、人形を捨てると、メリーさんから電話が掛かってきて……まぁアレだ、最後は恐ろしいことになるって感じの話だ。
だがしかし、俺の怒鳴り声で萎縮してしまったのか、メリーさんの声ははおどおどしていた。
こうなってしまうと、恐怖なんてものは微塵も感じられない。
「んで、要件は? 俺、人形捨てたりしてないんだけど」
『あ、あの……一旦、出直します……はい……』
プツッと音を立て、電話が切れた。
……一体、何の嫌がらせだよ。
ていうか、メリーさんの声、何処かで聞き覚えがあるような……。
気を取り直して寝ようと、瞼を閉じたとき、再び携帯の着信音が真っ暗な部屋に響き渡った。
携帯には非通知の三文字。
「本当に出直してきやがった」
俺は溜め息を吐き、電話に出た。
『私、メリーさん。今、あなたのお家の前にいるの』
さて、ここからどう話を展開していくのだろうか。
…………。
『もしもし? ……もしもーし……』
『あれ? あれ?』と、困惑するメリーさんの声が、僅かだが聞き取れる。
このまま放置しておくと、どうなるのだろうか?
暫し様子を見てみよう。
…………。
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