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「きゃああああああ!! 助けてええええ!!」
真昼間の繁華街に、悲鳴が響き渡る。
慌てて逃げ出す人の波を嘲笑するかのように、第二の太陽と言わんばかりに、そのスキンヘッドで太陽光を反射させ、黒いスーツ姿の男は、悠々と繁華街を闊歩する。
「ふはははは! 日本に住む、全ての雀士のツモを無駄ヅモに変えてやるヅモ!」
そして、その男の周りでは、黒い全身タイツに身を包んだ戦闘員が、その片手に持つ竹刀で、繁華街に立ち並ぶ店のガラスや、自動販売機などの破壊に勤めていた。
そんなことはさせないわ!!
その声と共に、男の前に一人の風に腰ほどまでに伸びた髪を靡かせ、女子高生が現れた。
「何だお前はヅモ!! この怪人無駄ヅモー様が怖くないと言うのかヅモ!!」
スーツ姿の男――無駄ヅモーはその女子高生を指差し、怒声を放つ。
戦闘員達も破壊行動を一旦中断し、彼女を警戒する。
だが、彼女は怯むことなく、無駄ヅモーを睨み付ける。
「良い度胸じゃないかヅモ! 名を名乗れヅモ!!」
「生憎だけど、怪人に名乗る名前なんて、持ち合わせてないのよ」
女子高生はそう言い、ブレザーのポケットから携帯電話を取り出し、タッチパネルを操作した。
≪声紋センサー起動、コードを音声入力して下さい≫
「けろりんけろりんけろけろりーん!」
無機質なガイドボイスの後に続き、女子高生は携帯を掲げ、高らかにそう叫んだ。
≪認証完了。変身プログラムを起動します≫
すると、彼女が身にまとっていた制服は、見る見る内に、緑を基調としたロリータファッション風のジャンパースカートに変わり、中に着ていたブラウスにはフリルが付けられたのである。
「アナタのハートをブロークン!! 正義の魔法少女、マジカル☆ケロリン! さーんっじょう!」
両頬の前でダブルピースし、ケロリンはウインクをした。
「な!? お前は……マジカル☆ケロリン!!」
無駄ヅモーは、その何とも言えないキュートな変身シーンに圧倒され、三歩ほど後ずさった。
「日本中の雀士が麻雀を楽しめる、よ、う、に、アナタを漏れなく滅殺しますのでー、そこんところよろしくネ!」
ケロリンが指を鳴らすと、金属バットが空から舞い降り、彼女の右手に収まった。
「せ、戦闘員共! あいつをボコボコにするヅモ!!」
無駄ヅモーがそう叫ぶと、戦闘員達はケロリン目掛けて走り出す。
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