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尚弥が向いた先には、一人の少年が雑誌を読んでいた。
正確に言えば、エロ雑誌を読んでいた。になる。
少年の名は『漆 黒雅』(うるしこくまさ)。
見ての通り、変態である。少々跳ねた茶髪の髪に、黒い瞳。雑誌を見て興奮しているのか鼻から一筋赤い液体が垂れている。
黒雅は彼の言葉に動揺せずに言う。
「エロ本に決まっているでしょーが!良いか尚弥、エロ本はな、この世にいるお前や和希の様なイケメンどもが可愛い女子たちを取りまくるもんだから、俺たちの様な奴らが楽しむ為に作られた天から授かった至高の一品なんだよ!分かるだろ?分かるだろォォォォォォォォォォォォォッ?」
そんな黒雅の言葉を聞いた尚弥は「お前は顔は良いが、性格に難があるからモテないだけだろ」という言葉をあえて飲み込み、「ハイハイ」と適当な返事をして、屋上から出て行った。
屋上から出て行った尚弥は溜息をつく。
「アイツが居たんじゃせっかくの景色も台無しになるな」
彼はそう呟くと、下に続く階段を降りていく。だが、
「のわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
と、大きな声が響いた。二階まで階段を降りて行くと、
「……………和希?」
彼の友人であり、小中学までは同じクラスであった少年が何やら見慣れない少女から逃げていた。
おそらく、全速力で。
「おい!どうした!」
尚弥はすぐさま和希を見つけて大声で叫ぶ。
「助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
そう言い、ぴょーんと、最高の跳躍を見せつける。
俺に、向かって。
「バカヤロぉぉぉぉぉォぉぉぉォォォォォォォォォッ!!」
ドギャッ、と男二人は華麗に倒れ込む。
「いつつつ……」
尚弥は頭を擦りながら起き上がる。
共に倒れた和希を見れば、目を回している。
気づけば、自分の前には人が立っていた。女子だ。
綺麗で見とれる茶色い髪に黒い瞳。身体からは女子特有のいい香りがする。
と、じろじろ見ていると
「なに見てんのよ」
と、返してくる。
「はぁ…別に」
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