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「何よ、言いたい事があるなら言いなさいよ」
「別に」
「何よ」
「そっちこそ何だよ」
「あんたがなんなのよ」
そんな他愛の無い言い争いを行っていると、廊下から一人の少年が歩いてきた。
整えられた黒い短髪に、大きくも細くもない目。右腕には『風紀』の腕章が付けられている。
「海斗…」
海斗と呼ばれた少年は、二人の元へ歩み寄る。
「邪魔」
とだけ告げると、横で目を回していた和希を容赦無く蹴り飛ばす。
あー、と聞こえた気がしたが、そんな事に耳を傾けず、颯爽と歩いていった。
「おい見ろよ、早くも次期風紀委員長に確定した一ノ瀬海斗だ」
「本当だ。マジ、クールだなあいつ」
そんな生徒達が会話をしているのを耳に入れつつも、壁際ですっかり存在感を無くし倒れている和希に
「ご愁傷さまです」
と、手を合わせて死んだ兵士に祈りを捧げるかのように呟くと、
「…なにすっかり私の事忘れてんのよ?」
「お、悪りぃ」
言葉を返し、女子の方に向き合う。
「んで、お前の本来の用はなんだ?あいつはもうダメだから代わりに俺が聞くぞ?」
女子はそう、と返すと、彼の目を見据え、口を開く。
「私の名前は橘 里奈(たちばな りな)。そこの紅野和希にはあなたの事を聞こうと思っただけ」
「じゃあ、何であいつはお前から逃げてたんだよ」
「私の身体をまじまじと見ていたからブチのめそうと思ったのよ」
「あぁー、んで?」
「……まぁいいわ。あんた、私のパートナーになってちょうだい。」
この時、この瞬間、オレの人生は大きく、狂いだした。
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