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「わ、びっくり。まだ一時間くらいだと思ったよ」
「それでも遅刻です」
一時間くらいって。どちらにしても遅刻じゃないか。そんなやりとりに名雪さんは軽く首を傾げる
「どうしました?」
「うん、こんなやり取り最近したような気がしたんだよ~」
名雪さんがう~んと唸る
俺が知るか。
「それより…はい♪」
「…缶の紅茶?」
「ホットレモンティー。温まるよ~」
唐突に名雪さんから差し出された缶紅茶を受け取る
「再会のお祝い、だよ♪」
「…随分安いお祝いですね」
俺がジト目で見上げても全く動じることなく朗らかに笑う名雪さん。さすが秋子さんの"娘"だ
水瀬名雪さん。これから俺が住まわせてもらう水瀬秋子さんの娘さんで、"柏木優"だった頃に一度だけ遊んだこともある人だ。それから何故か10年間会うこともなく今に至る。
「さ、行こ~♪」
「あ、はい」
俺はを差し出した名雪さんの手を握り立ち上がる。それからしばらく雪の降りしきる街を貰った紅茶をちびちび飲み空いた手を名雪さんに引かれながら歩き出した
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