第一章

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「ん~……。どこにしようかなぁ。」 授業が終わり、先生が教室を出ていった後、あたしは数枚の広告を見ていた。どれも色鮮やかに飾られていて、目がチカチカする。 この数枚の広告は女子サッカーのクラブチームの広告で、あたしは中学に入学してから、ずっとこの広告たちとにらめっこしている。大抵の中学校には女子サッカー部なんてのは無い。だからこうして、クラブチームに入部するしかないのだ。 「ぁぁ。どこが良いかなぁ?」 あたしは疲れはてて机に突っぷくした。 「どうしたー?ひなた。まだ決まらないのか?ほんと、トロイなあ。そんなに決められないなら、うちのチーム入ってよ。ひなたは天才なんだから!超天才なんだよ?監督がずっと連れてこい連れてこいってうるさいんだよ。」 「楓。何度も言うけど、あたしには理想のチームがあるの。みんながみんな笑顔で楽しくサッカーできるチーム!勝ち負けにこだわらない、ほんとに楽しむことを目的とした、そんなチームじゃなきゃ嫌だ。」 楓は小学校の時、一緒にサッカーをしていた親友だ。 「それに………。あたしは天才でも何でも無い。」 机に広告を叩きつけ、あたしは教室を出た。 確かに、あたしは全国少年サッカー大会で最優秀選手賞をもらうほど上手かった。けれど、それは好きだから努力をした訳であって、決して天才ではないし、才能に恵まれている訳でもない。楓が頑張っているのは知っているし、楓が嫌いなんじゃない。 ただ、 あたしの努力を……… 天才だから とか 才能があるから とか そんな風に言われるのは……… 正直カチンとくる。
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