第一章

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放課後。あたしはさっき見ていた広告のひとつのチームを見学に来ていた。「体験するかい?」と聞かれたが、体験してしまうとほとんどのチームが入部を強要してくる。あたしほどの選手をどうにか手にいれたいのだろう。金まで払うと持ちかけてくる監督がいるほどだった。 だからあたしは体験せずに見学だけで決めることにした。 が。見ているだけというのも、ものすごく暇で見ているとプレイしたくなる。最近見学ばかりだったので、みんなでプレイしていない。そろそろ限界だった。 「すみません。最後のミニゲームだけ、混ぜてもらっていいですか?」 50すぎくらいの監督は、落ちついた声で 「いいよ。もうすぐだから。少し体を動かしてなさい。」 と言った。 あたしはすでに動きやすい格好だったので、ストレッチを始めた。 5分も経たないうちにチームがわけられ、あたしはピンクのゼッケンをつけた。 思った通り、みんな正直下手で監督もみんなも、あたしのプレイを見て、金魚のような口をしていた。 ミニゲームが終わり、帰り支度を終え、監督の所に挨拶に行った。すると監督は先ほどとは声のトーンがイチオクターブほど高い声で入部の話を持ちかけてきた。 もちろん今日はサッカーできて楽しかった。勝ち負けにこだわるようなチームでもなさそうだし、みんな楽しそうにプレイしている。けれど、あまりにも弱すぎる。
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