1人が本棚に入れています
本棚に追加
あたしは入部の話を断った。
そして帰り道、あたしの家は川沿いにあるので橋を渡って川にそって歩いていた。
あたしの理想って高すぎるのかなぁと少し考えながら歩いていたので、横から飛んできたボールに気付かなかった。
バアアアン!!!
もろに顔面にくらってしまった。
「すみませーん。大丈夫ですかー?」
若い男性の声だった。
「大丈夫です。」
と見栄を張り、ボールを声の下ほうに蹴った。ドロドロに汚れた白いボールだった。
「ぁ、ありがとー!!!」
と言った声の主はじっとあたしの方を見ている。
よく見ると、男性は河川敷に立っていて、まわりには、数人の女の子がいた。みんなでサッカーをしていたのだろう。スパイクが泥だらけになっていた。
いつまでもこっちを見ていた男性が何故かこちらに近づいてきた。
目の前までくると、男性は右手を前に突きだした。
「SPEC FCの監督やってる黒崎っていいます。君は?」
「あ……。称崎ひなたって言います。」
と言いながら、手をとる。
「そっか!ひなたね!ひなた!よし。覚えた!」
「ぁ、あの…じゃああたしはこれで……。」
「待って待って!ひなたサッカーしてるだろ?」
「してませんよ。」
「じゃあサッカー超上手いだろ?」
「そんなことないですよ。」
「ほらやっぱりしてるんじゃん。」
「あ………。」
「だって、さっきの蹴りかた。無意識に蹴ったのかもしんないけど、無回転だったぞ?」
「う………はい。してますよ!してます!けど超上手いとかそーいうわけじゃな…………………」
「じゃあみんなと一緒に楽しくサッカーしよー!!!」
「人の話は最後まで聞いてください。」
「はいはい!黄色チームね!」
「……………。」
黒崎さんといると調子が狂う。すごく気分屋でフレンドリーでマイペースだ。あたしも外ではクールを装おっているが、ほんとうは黒崎さんと同じタイプだ………………から嫌いではない。
「ほら!やるぞー!」
あれこれ考えているとゲームが始まってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!