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「水遣り?」
「うん。なかなか世話が焼けるんだよ。彼ら」
僕はホースを持ってきて、蛇口をひねった。ゼラニウムの隣の花壇には、水仙が植わっていて、その隣は木瓜だ。エルヴェは水仙を評価する。
「なかなか、綺麗じゃないか。品があるし。随分咲いたね」
「結構ね。でも、彼女、少しつんつんしてて、近づきがたい。ちょっとお高いというか。でもそのくせ、ほんとは淋しがりで、ああやってみんなで咲くんだよ」
「そういうところが、ちょっと、可愛いよ。隣は?木瓜?」
エルヴェは水仙の隣で赤い花をたくさん咲かせている花に目をやった。
「そう。あいつは、去年たくさん枝を切ったのに、巻き返すように咲いてるだろう?負けず嫌いなんだ。かなり。そういうとこが、ちょっと好き」
「君は水仙より木瓜が好きなの?」
「水仙も同じくらい好きだよ。彼女は、人に媚びない」
僕はそれぞれプランターと花壇に水をやった。それから、少し離れて立っている木蓮の根元にも水をかけた。最近は、乾燥するから、一応。木蓮は大きな白い花を開かせていた。
「この木が一番の古株かな。威厳があるし。これがあるから、この庭は守られてるのかも。でも、僕は本当は、隣の小さなみかんの方が、好きだけどね」
「サボテンといい、君は小さいものが好きだね」
エルヴェは笑って言った。
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