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僕は、彼を、どこかで、よく知っている。
何を知っているのか、よくわからない。
けれど、知っている。
彼は、僕に、よく似ている。
彼は煙草に火をつけて、僕にも箱を差し出した。白い指に、どこかで覚えがある。
「エルヴェ」
「エリック・サティは気にいった?」
彼は僕の言葉を遮って言った。少し振り返る。彼も僕を見ていた。その斜め横顔の輪郭線を、僕は、ここではない場所で知っている。
「サティ」
「一人で居るには、お誂えだろう」
そう、僕は、しばしば、一人だ。僕は、誰にも接触しない。
彼も同じ、一人なのだ。僕たちはいつも、一人、なんだ。
僕たちはお互い、よく似ている。
彼も僕と同じ、孤独。
エルヴェは微笑んだ。僕も少し微笑む。
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