利害得失

11/18
1017人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
遠のく意識の中私は咄嗟に一君の着物の合わせを掴んだ。 遠くに聞こえる一君の声。 あ~このまま死ぬのかな? やりたい事まだいっぱいあるのに・・・ でも山南さんも平助も皆いるし、武器もそれなりに揃ったし、練習もちゃんと出来てるから何とかなるかもしれないな・・・ なんて真っ暗な視界の中、私は意識を手放した。 ******* 「芽衣実!!!芽衣実!!!!」 武田の気配には気付いていた。 間に合わないと思った瞬間、フッと俺の頬を風が撫でたと思ったら嫌な音が耳に入った。 一瞬何が起こったのかわからず、振り向くと芽衣実の長い髪が視線の隅に映った。 俺と武田の間に芽衣実が割って入ったんだと気付いた。 慌てて手を伸ばし、芽衣実を俺の後ろに引き入れようとしたが、身体を反転さした芽衣実はそのまま力任せに俺を付き飛ばした。 一瞬よろける様に一歩二歩と後ろに後退した俺の目に映ったのは、腹部を貫かれ、『よかった・・・』と小さな声で呟いた芽衣実の姿だった。 「一君!!芽衣実ちゃん!!!」 遠くで総司の声が聞こえた。 芽衣実は腹部の刀を抜かれまいと握り閉めた。 左肩は芽衣実の紫の着物の色が真っ黒になるほど出血している。 「このやろ~~~!!!」 平助の姿が武田の後ろから見えると武田は俺の顔を見てニヤリと口角をあげて笑った。 そしてそのまま刀を放し崩れ落ちた。 それと同時に芽衣実は意識を手放すまいと俺の着物の合わせに手をかけた。 「め、いみ・・・芽衣実!!!」 俺は崩れ落ちる芽衣実の身体を支えながらただ名前を呼ぶことしか出来なかった。 俺の代わりに芽衣実が刺された。 武田は芽衣実ごと俺達を貫こうとしたんだと理解した。 それに気付いた芽衣実が俺を突き飛ばしたんだと・・・。 それからどうやって屯所に帰ったか覚えていなかった・・・。 ただ弱々しく呼吸する芽衣実の手をずっと握っていた事だけしか覚えていなかった。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!