利害得失

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皆の声がどんどん大きくなって、私はゆっくりと引き戻される様に意識を戻した。 あまりの眩しさに想わず開けた瞳をもう一度軽く閉じ、開け直した。 「みんな?」 視界いっぱいに入りきらない皆の顔に驚きながら、一番近くで覗きこむ一君の優しい笑顔を見て安心した。 「一君怪我ない?」 「あぁ、俺は何ともない。」 そう言って握ってくれていた手に力を込められて、初めて一君が手を握っていてくれた事に気が付いた。 「松本先生が助けてくれたんだぞ?」 土方さんは珍しく眉をハの字に下げて心配そうな顔をしながら教えてくれた。 「そっか・・・お礼言っとかなあかんな。」 「あぁ、でもホントに良かった。」 「総司、ありがとう。」 「なにが?」 「私の事運んでくれたん総司やろ?」 「そうだけど、君意識なかったでしょ?どうして?」 「総司の声がした。 『芽衣実ちゃん!頑張って!もうすぐ屯所だから』って。 平助の声も聞こえたよ。」 そう言って平助の姿を探すと顔を隠してうずくまっていた。 「こいつ、嬉しすぎて泣いてやんの。」 新八のおどけた顔を見ながら私は静かに平助を呼んだ。 「平助。」 「芽衣実!!良かった・・・よかった・・・」 今だに涙を流してくれる平助の頭を撫でながら総司と同じようにお礼を言った。 「平助、助けに来てくれてありがとう。」 泣きながら頭を横に振り『当たり前だ』とほとんど言葉にならない様に返してくれた。 「一君?」 「なんだ?」 「怪我しなくて良かった。 有難うずっと名前読んでくれてたな。」 そう言ってほほ笑むと、優しい声で『あぁ。』と短く答えてくれた。 「斉藤の奴、芽衣実が運ばれてきてから誰が何て言おうが離れなかったんだぜ?」 「そうなん?」 「芽衣実は俺をかばって刺されたんだ・・・。」 「一君が怪我せんかったんやから言いの。」 悲しそうに、悔しそうに伏せられた目に私は明るい声で言うと後ろから少し厳しい声が聞こえた。 「芽衣実さん、無茶をし過ぎです!!ましてや貴女は女性なのですよ!!」 「ごめんなさい。山南さん。」 声の主は山南さんだった。 私は素直に山南さんに謝ると、言葉とは裏腹に心配そうな顔をしていた。
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