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あの日以来土方さんの姿は見ていない。
夢だったんじゃないかと思ったりもしたが、テーブルの上には土方さん直筆の紹介状があの日のまま置いてある。
いろんな事を考えているうちに、気付くとカップの中のコーヒーは空になっていた。
「そろそろいいか?」
突然後ろから声がした。
振り向くとあの日の姿のままの、べっぴんなお兄ちゃんこと土方さんが立っていた。
時計を見ると午後9時。
「行こうか土方さん」
笑顔でそう答えると土方さんは困った様な笑顔を向けてくれた。
「本当にいいのか?
帰れる保証もねぇ。幕末を生き抜く事すら難しいのをわかってて……。
わかっててそれでもお前は。本当にいいのかよ」
「自分が頼んだくせに。
何とかなるでしょ。
それになんかやらなきゃいけない気がする。何でだろう?わかんないけど。
不思議な気分」
眉をあげながらそう答えると同時に二人で小さく笑いあった。
そして私は5年住んだ部屋にしばしの別れを告げて部屋を出た。
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