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昨日の放課後は、ゆったりとした空のオレンジに、気も晴れた。
北野は部活が終わり、昨日まで付き合っていた遊佐加 梨乃(ゆさか りの)と待ち合わせた校門前まで全力で走った。
「はあはあ…お待たせ」
「うん…」
会った瞬間に分かった。彼女は何かを隠している。伊達に数年間付き合った間柄では無い、少しの異変でさえ、北野には感じ取れた。
「なんかあった?」
息を整えながら聞くと、梨乃は言いづらそうに口を開いた。
「別れよう…好きな人が出来たのよ」
「好きな人って…嘘だ」
「嘘じゃないの」
その時、北野は自分でも気づかなかった。自分が梨乃の首を絞めていることに。
突然出た涙に前が見えなかったのか、怒りで気が狂っていたのか、とにかく北野は訳も分からずに梨乃を殺した。
奇跡的に周りに人はいない。誰かの悲鳴も聞こえない。とっさに北野は梨乃の死体を担いだ。彼女をおんぶするのは初めてだ、最初で最後の経験だった。
そのまま一歩踏み出した瞬間、北野は前のめりに倒れた。彼女がのしかかり、右膝がコンクリートの地面に叩きつけられた。
この時に痛みは感じなかった。きっと彼女を早く隠さないと、そういう不安と焦りでいっぱいだったのだ。
そして再び彼女を担ぎ、近くの排水路に投げ捨てた。彼女のポケットや担いだままの鞄に石をたくさん入れた。
手をはらい「ふう」と一息吐いたころには、陽もすっかり暮れていた。
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