救いの手

26/26
13592人が本棚に入れています
本棚に追加
/474ページ
「出て行くの?嫌だよ。ヒロ兄!」 「……」 「俺、悪い所、ヒロ兄の思う所直すから、行かないで!!」 縋ってくる金髪の少年。 普通の人なら美形で可愛くカッコいいこいつに折れるのだろうけど…… 俺は手を振り払う。 「離せ」 ただ、その一言だけでショックを露わにする可威は動きを止め涙をボロボロ流し始めた。 それを無視して俺は階段を一歩また一歩と言い争いの声をBGMに降りて行く。 そして、玄関には待っていた真人さんの姿を捕える。 「広樹!何で出て来てんだ!」 真人さんと言い争っていた砂威兄さんは俺の元へ来て取り押さえる。 「ぃっ、離して、離して…オニイサン」 もう名前で呼ばないと決めた。 けど、そのせいでか掴む手に力が入り、骨が軋む。 痛い。 でも、従いたくない。 助けて。 俺にこの人に勝てる力なんて… 「ヒロ…おいで」 「っ!」 懐かしい優しい声。 甘やかしてくれる時に出してくれる声。 そして、呼び名。 「おにいちゃんっ!」 その瞬間何故か押さえられていた力は消え俺はお兄ちゃんの元へ走って行けた。 「ひ、広樹…行くな」 「ひろ…き…お前本気で…」 オニイサンとトウサンが言う中俺は終始お兄ちゃんに抱きついたままだ。 体に力が入らないから。 抱きついたら力が抜けてしまった。 「行こうか、ヒロ。家に」 「うん。行く……行きたい」 もう、お兄ちゃんの声しか聞きたくない。 ここに居たくない。 俺はお兄ちゃんの腕の中で支えられながら歩き家を出る。 最後に見た、トウサン達の顔は凄く……何故か辛そうに歪んでいた。 ――さようなら… バタンと閉る玄関の音。 微かに聞こえたのは、俺の名を呼ぶ男の叫び声だった。  
/474ページ

最初のコメントを投稿しよう!