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「ヒロ、ヒロ。これ見て見ろ。俺とマサとヒロの写ってる写真だぞ!」
カズがアルバムを片手に勢いよくやってきた。
それに、押されぎみのヒロを気にせず、机の上にアルバムを広げ一枚の写真を指さす。
「あ、これ俺だ」
そう、可愛く笑っている幼いヒロが写っている写真。
そんなヒロの後ろに抱きしめるように映っている……不良がいた。
2人。
金髪と茶髪そり込みが……。
「…これ、って」
「この金髪がマサで、このそり込みが俺」
「全然違う」
驚くのも無理はない。
だってヒロの言っている事が正しいのだから。
今の俺らと写真の俺らの雰囲気は全然違う。
「良く更生出来たよな。俺ら」
「笑い事じゃねぇ。…まぁ、広樹と出会ってなきゃこのままだったかもな」
「え?」
「俺ら広樹の笑顔で救われたたんだぜ?お前普通のガキじゃなかったし」
「そうそう。こんなガラの悪い俺らの所に無理やり預けられて、母さんが離れて行ったのにニコニコ笑ってさ。ある意味最強?一番あれてたマサに普通に近づいて『いい子』とか言って頭撫でてたしな」
そうなんだよな。
こいつに、強く当たってたのにそれでも俺の所へ来たり。
大人でも俺らを避けるってのに、……そんな変な調子で俺らの心を何故か開かせたガキがこいつ何だよな。
「ほら、アルバムなら後でも見れる。広樹はこれ食って薬飲め。で…カズ」
「でな、俺は人一倍来たばっかの広樹を……って、何だ?マサ」
「時間良いのか?つか、出て行け。俺も会社だ」
「って、あああ!遅刻だ!くっそぅ。ヒロ、また夕方な!夜は俺が作ってやる!」
慌ただしく出ていたカズの後ろ姿を見る俺と広樹。俺はもう溜息しか出ない。
いつものことながらな。
「じゃあ、俺も行くけど。昼のも置いてあるから温めて食べなさい」
「…うん、行ってらっしゃい」
寂しそうに微笑む広樹に俺は頭を撫で笑ってやる。
「週末までに風邪治して買い物行こう。ベッドとか色々買わないとな」
「え?」
「これ、決定事項だから。治すのは課題な。…じゃ、行ってきます」
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