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-side.可威-
あの日、ヒロ兄が出て行ってしまった。
終業式にも学校に来ないヒロ兄にヒロ兄がいなくて皆、周りの奴らは笑ってたけど俺は俯き拳を作っていた。
掌には爪のあとが残るくらい。
どうして、
どうしてこんなことに。
こんなの予定じゃなかった。
こんな結末ってない。
俺は、義父さんに問いただした。
『あの人の家はどこにあるの!?ヒロ兄はどこ!?』
ヒロ兄があんなに親しく、そして、義父さんとも知ったような感じに話していた。
だから、知っていると思った。
でも、
『知らないんだ……。真人君に会ったのは…菜月の葬式の時だけだから』
知っていたら探しに行くという様に辛そうな顔をしていた。
そんな顔をするなら、何でヒロ兄を殴った。
殴ったから出て行ったんだ。
実の父親のくせにヒロ兄を邪険にして。
『……なら、自分で探す』
そんな憎しみの言葉を義父に感じている時、隣で低く、そして暗い声がした。
そこには砂威兄が無表情で義父を見降ろし、そしてその場を離れた。
これも予定外。
予定外が続く。
砂威兄はヒロ兄を嫌っていた。
なのに、
『広樹……待ってろ……』
ヒロ兄の部屋でそう呟く砂威兄の言葉に分かってしまった。
俺は気付かないでほしかったのに、出て行ってしまった事で砂威兄は気が付いてしまったんだと。
いつの間にか、ヒロ兄に魅了されている事を。
砂威兄はヒロ兄の荒れた部屋を直すとパタンと部屋を出て言った。
『可威……広樹を取り戻すぞ』
と……。
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