涙とその後

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「可威ここで何してる」 「っ、砂威兄」 いつの間にか帰って来ていた砂威兄に驚く。 今は俺を優先にする砂威兄ではない。 俺と同じ感情を持ち、この部屋、ヒロ兄の唯一のものが残るこの部屋を大事にしている人物。 「また、盗もうと?」 「ちがう。母さんが……あの女がヒロ兄の物捨てようとしたから。戻してた」 「は?……っ、あの女」 砂威兄は元々母さんを好きではなかった。 俺もだけど、鬱陶しいし気持ち悪い。 美形好きで義父さんを絶対に選んだし、てか、ここのヒロ兄の母さんの写真くらい残しててもいいと思う。 何で捨てるとかさ。 パタンと、タンスを閉め立ち上がる。 ヒロ兄の匂いがするこの部屋が好きでずっと居たいけど、砂威兄が許してくれないだろ。 「ヒロ兄の、情報って」 「まだだ」 苛立った様子の砂威兄に廊下に出て聞いた。 でも、返ってくるのはいらだった声。 本当に見つからないんだ。 総力をあげても見つからない。 「けど、絶対に見つける。アレは俺のものだ」 そう言って部屋に入る砂威兄。 "俺の"ね……。 協同戦線しているけど、俺だって負けない。 今度、再会できたらヒロ兄だけを可愛がる。 作ったのが嫌なら素のままで。 大丈夫。 俺は、絶対に悲しませない。 だって、ずっと好きだったんだから。  
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