涙とその後

22/31
前へ
/474ページ
次へ
ギュッと拒絶するように目を瞑る。 まだ残っている痣が疼く。 「―――そいつに近づくな」 「っあ……」 聞きなれた声で目を開けると、目の前には真人さんの背中。 俺と不良を隔てるように立っていた。 俺はその背中にホッとする。 「広樹、大丈夫だ。こいつらは俺らの後輩みたいなもん。それから、カズの生徒だ」 「う、うん。いきなりだから、ちょっとビックリしただけ」 ホッとしているのは本当。 真人さん越しに見るとあまり恐怖感がない。 1対1というか、信用している人がいれば…平気かも。 「こいつは、マサの親戚。お前ら手ぇ出したらぶっ飛ばすぞ」 「マジッすか?分かりました」 「さーせんした」 「分かったならさっさと行け。俺はマサとこいつとデート中なの。邪魔すんな」 デート中って……。 真人さんの顔が「馬鹿か」と言う顔してる。 てか、生徒にも真人さんを好きだってバレてるんだ。 「ほら、行こう」 「よし、カズを置いていこう。行くぞ」 「ちょっ、待てってば!お前らちゃんと宿題やんねぇと3倍にするからな!夏休み明けを楽しみにしとけ!」 「「は?!聞いてねぇ!!」」 「大丈夫か、広樹」 「え?」 離れた所で聞かれた。 真人さんは俺の顔を覗き込むように見る。 「大丈夫だよ」 多分。 「一括りにしてるだけ。今だけだと思うし」 「無理すんな。馬鹿」 だって、。 俺の知っている不良って、あの人達みたいに信者的で上の命令は絶対。上下関係がハッキリしている上司と部下みたいな感じ。 全員でしか来れない卑怯で最低な奴ら。 弱いものを虐めることしかできない奴ら。 あいつらだって……  
/474ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13630人が本棚に入れています
本棚に追加