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Side.真人
ここ数日。
広樹が外に出るのは俺とカズが休日で一緒に連れ出す日だけだ。
それは広樹の負った心の傷のせいだって分かっている。
あの日、族の後輩たちに会った時の広樹の動揺から見て分かる。
俺の久々に会った時、ただの虐めによる人間不信とかのちに考えていたけど、多分そうじゃなくて人間と言うより"不良"なのだと。
暴力等は不良が優先的にやっていたのかもしれない。
それが憎くて仕方がない。
大切な甥を傷つけた餓鬼どもが。
けれど、広樹は仕返しを望んではいないだろう。望んでいるのは、俺やカズが側に居てやること。
それで、広樹が心を開いて人と接することに外に出る事にあまり恐怖を抱かなくなるならそれでいい。
家に居たいのならそれでもいい。
でも、あいつは勉強がしたいみたいだから。
本とか買ってやろうと言った時、選んできたものは全てそんなもの。
参考書だったり、有名な小説だったり。
漫画とかにも興味があるみたいだけど、手を付けなかった。
俺は思った。
あいつは学校に行きたいのではないかと。
ただ、平穏な学校に。
それで大学に行きたいんじゃないかって。
聞いてみたけど、返答は「金…もうないしいいよ」と言うもの。
"学校"という単語にビクっと反応するも恐怖だけでない寂しさの籠った目。
どうしてそんな我慢するのか。
困ったものだ。
バタンッと俺は車の戸を閉め鍵を閉める。
賭け的なものをしているが、仕事終わり俺は広樹の実家に着ていた。
ここに今、あの兄弟と女がいなければいいけど。
ピンポーンと呼び出し音が2回なる。
数秒立つと知った声が聞こえてきた。
《どちら様ですか?》
「……夜分遅くすみません。奥村真人です」
そう言うと、息を飲む声とともにぶちっと通話が切れ家から慌ただしい足音がした。
バンッと扉が開き、中から美形…人の事言えないかもしれないが若い頃とあまり変わっていない広海さんが出てきた。
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