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「ヒロっ……ぁ…」
それも、広樹を期待して。
残念ながら俺だけだ。
「広海さん、少しお時間よろしいでしょうか?」
にこりと対人向けの笑顔を向け俺はそう言った。
広海さんは「……あぁ」と戸惑いながらも中へ入れてくれる。
玄関に入り、静かな空間を見て俺は心の中で邪魔ものがいない事ににやけた。
あれらは今家に居ないらしい。
自然に広海さんに聞いてみたが小さな声で否定した。
リビングのソファに向かい合う様に座る俺たち。
さっさと帰りたいし、本題に入るか。
俺は鞄からある書類を出す。
昼間、休み中に役所で貰って来た書類。
「広海さん、何もしないでいいのでここにサインだけして下さい」
「……これは……?」
「転校届です。一応、親のサインが必要ですから。けれど、金は要りません。俺が全てやります。あなたはただ、これにサインをしていただければ結構ですので」
それに広海さんはカッと目を見開き、手を震わせる。
それがどういうことか、俺には分かった。
何を言いたいのかも。
「転校って……広樹は学校をやめたって聞いたがまさかそれは」
そう、数週間前。
行動に移し始めたときの一番最初。
広樹のもと通っていた学校をやめると言う事。
自主退学。という形で。
広樹が言うにはあそこの教師の大半は毒されていて広樹を鬱陶しがっていた。
ムカつくがそれを利用し簡単に目的を果たす事が出来た。
最後はこれ。
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