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「広樹の意志です。俺は強制していない」
「っ、どこに行かせる気なんだ。……広樹を」
「言う必要性が分かりませんが?」
広樹の事をどうして話す必要がある。
あの子は望んでいない。
「さっさと書いてください。俺も暇ではないんです。あとこちらも」
「っ!!こんなものにサインできる訳ないだろ!!」
もうひとつの方を見て怒鳴る。
それは養子縁組の事だ。
広樹はまだ16になっていない。
親の承諾が必要。
「これは個人的に勝手に貰って来たものです。ただ、書いてもらうだけでいい。広樹が望めば提出して俺の息子にします」
「なっ、……っ、」
そんなに、悔むならあんな事しなければよかったのに。
あなたと違って広樹は子供なんだ。
幼いころに、愛情を捨てられてしまった愛情に焦がれる可愛そうな子供。
貴方だけのはずだった。
分かってあげられて支えあって行けたのは。
広海さんが、震える手でゆっくりと躊躇う様にサインされた書類を持って俺はその時の広海さんを思い出していた。
車を走らせ広樹のやっと本当に笑えるようになってきた表情と一緒に。
あの人の罪の重さを考える。
これは罪だ。
帰り際に、「広樹を帰してくれ」と言われたが、それは俺が決める事じゃない。
養子になるのも、拒否するのも、帰ると決めるのも、全て広樹の意志しかない。
勝手にできるわけがない。
――ガチャッ
「ただいま。広樹」
「お帰り、真人さん!」
「お帰り!マサ―――グホォ!」
なんで、お前が居る。
てか、条件反射で、というか何だそのエプロン。気持ち悪くて殴ってしまった。
ふりふりレースって……お前、全然似合わねぇ。
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