その頃夜鷹は…

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「いらっしゃいまし 空いてるお席へどうぞ」 どうやら、店を見渡す夜鷹を見てどうすれば良いのか分からずに居たように見えたらしかった。 だが夜鷹はその言葉を聞けば、一度頷き空いていた奥の方の席へと座った。 品書きを眺めていれば、先程の少女がお茶を持ち再びやってきた。 ことり、とお茶を目の前に置かれるのを確認しながら夜鷹はその少女に声をかけた。 「御手洗団子10本、三色団子5本、羊羹2つ、餡蜜1つ」 するとその多さに目を見開いた少女だったが、直ぐ様軽く頭を下げながら少しばかりお待ちくださいなと言えば中へと入っていった。 それを見ながら、夜鷹は表に出すことはないが内心楽しみにしていた。 何たって夢にまで見た幕末の甘味が食べれるのだ!!これを喜ばずしてなんとしよう。 幕末で甘味を食べるという行動は、夜鷹が幕末に来たらまずやるべき事の優先順位2番目にあった。 「お待たせ致しました」 先程、夜鷹が少女に注文してから数分がたった頃、少女は甘味をその手に持ちやって来た。 流石に一度では運べなかったのか、一度夜鷹の前に置けば再び中に入り残りを持ってきた。 そして夜鷹はと言うと、軽く目を輝かせていた。 その見目麗しい見た目と、甘い香りが何とも夜鷹の食欲をそそる。 一口、先ずは御手洗団子に手を伸ばし口に入れる。 その時、第三者から見たら小さな、しかし夜鷹からしたら大きな衝撃が走った。 (この団子……美味しい…!!!) この団子のどこかふっくらしたようなもちもちした食感、御手洗団子特有の輝く蜜の甘さの中にある何とも言えない美味しさ。 勿論、夜鷹が元居た時代にも美味しい甘味処は有ったが、その何処より此処の団子は秀でていた。
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