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そんな事をふと思った夜鷹だったが、早々に御手洗団子を食べ終えれば他の甘味へと手を伸ばした。
他の甘味も実に絶妙な甘さがあり、夜鷹の舌をとても喜ばせた。
気に入った、夜鷹はそう思いながら一度だけ頷けば、少女を呼び止め再び先程と同じ物を頼んだのだった。
夜鷹が甘味を食べ始め15分程経っただろうか。
初めは味を見るように次から次へと手を伸ばしていた夜鷹だったが、それは夜鷹が本来食べる速度では無かったため今は先程と比べかなりゆっくりになっていた。
夜鷹が来た時に比べれば、かなり客は増えており殆ど空いてる席は無かった。
しかし、そんな事は知ったことではないので夜鷹はいつも通り至福の時間を楽しんでいた。
それから再び数分後。
夜鷹の隣には、既に常人からしたら目を見張る量の皿があった。
勿論、夜鷹にとってはまだまだ序の口である。
そんなとき、ふと夜鷹の前に影が出来た。
気配で誰かが近づいてるのは気付いていたが、めんどくさい上に至福の時間を邪魔されたくなかったので声をかけられるまでは何も言わないつもりでいたが、流石に目の前に立たれて無視は出来ないので顔を見上げる。
其処には少々茶色の混ざったようにも見える明るい髪の色をした少年──もしかしたら年齢的に青年かもしれない──が立っていた。
その少年は、夜鷹が顔を上げたのを見ればそう声をかけた。
「此処、良いかな?」
「どうぞ」
此処、と言いながら夜鷹の前を指差した少年を見て夜鷹は短く返事をした。
何故かこの少年とは馬が合う気がした。何となく。
それを知ってか知らずか、少年はすっと夜鷹の目の前に座ればその少年もまた慌ただしく働く少女を呼び止めれば夜鷹と同じくかなりの量の甘味を頼む。
それを聞いた夜鷹は一度、食べる手を休めて目の前に座る恐らく自分とそう年齢に大差はないであろう少年を見た。
同時に、目の前の少年は夜鷹の隣に積み上げられた残骸──皿とも言うが──を見る。
その瞬間、二人は同じことを思い思わず目が合った。
((こいつ(これ)……同志!!!!))
微妙な空気が流れるが、それを止めたのは丁度少年が頼んだ甘味を持ってきた少女だった。
「お待たせ致しました」
そう言いながら夜鷹と同じく少年の目の前に甘味を置く少女に、恐らく誰かが此処に居たならこう言うだろう。
プロ根性パネェ……と。
この時代にはそんな言葉は無いが、それはお愛嬌。
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