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一方、椿と離れた夜鷹は町を歩いていた。
(ふーん……なんと言うか、想定内かな
にしても、普段から和服で良かった。洋服なんか着てたらおかしいからね
まぁ、行くとなれば誰もが着替えるだろうけど)
怪しくない位に、辺りを見渡せば──と言ってもちらりと周りを見ただけである──ふと夜鷹は思う。
ここは幕末、ならば何処かに美味しい甘味処があるはず……と。
実はこの夜鷹、根っからの甘いもの好きであった。因みに、洋菓子なら紅茶を、和菓子なら抹茶を飲みながら過ごす一時は夜鷹にとっては至福の時間とも言える。
一度そう思い始めると、最早そこから離れられなくなる。
仕方ない、人間と言うものは欲に素直な生き物なのだ。等と第三者が居たら恐らく皆がツッコミを入れるであろう言葉を脳内に浮かべながら、夜鷹は甘味処を探しながらあるいていた。
因みに、夜鷹はある程度の金を持ってきており──勿論それはこの時代でも使える、と言うよりはこの時代の金である。夜鷹が幕末に来る前に自分の持ち金の三分の一程をある人物に替えて貰っていた──金には困らない。
寧ろ、この時代で普通に暮らしたら遊んで一生を過ごせるだけの金があった。
良い場所ないかな……と先程よりゆっくりと足を進めていた夜鷹がふと、その歩みを止めた。
そしてある一点を見つめる。
その視線の先には甘味処──其処からは甘いとても食欲をそそられる匂いが漂っていた──がある。
暖簾がかかっているあたり、店はやってそうだ。
そう思うやいなや、何を迷う必要があると言わんばかりに夜鷹はその甘味処へと足を進めていった。
夜鷹が暖簾を片手で上げながら入ると、そこは満席と言う程ではないがかなり人が多かった。
其れほど美味しいのだろうか。自分の目を少しばかり細くしながら夜鷹は店を見渡した。
すると、丁度ここの娘であろう少女が夜鷹へと寄ってきた。
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