花と水

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そして慣れた手つきで刀の手入れを始めた。 この作業をしていると、自然と心が落ち着くから不思議だ。 いつも周りに五月蝿いと言われる僕でも それは同じ、 こうして手入れの作業をしていると 僕だって静かになる。 そして刀の手入れに集中していると、 まだ半刻も経たない頃 急に静かな足音が近付いてきた。 最近屯所では感じなかった気配に 自然と警戒する。 道具を置き、何があってもいいように刀の柄をしっかり掴むと、 ちょうど足音が自室の襖の前で止まった そして、その気配の主は丁寧に挨拶をした。 「失礼します」 「どうぞ」 門前払いするわけにもいかないので 襖が静かに開いた。 僕は驚いた。 部屋に入ってきたその人の顔を見て、 だってその人は ここにいるのには余りに不自然だったから。
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