梨花、乱舞

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 いわく、二週間ほど前に、部活が忙しいから帰宅部の狭霧に何人かと宿題を頼んだ。その後何度か世話になっているうちに狭霧の優しさに甘えてしまい、いつも任せるようになってしまった。しかし今日は珍しく断られたためついカッとなって三人で云々(うんぬん)、だそうだ。  左手に持った残り二冊のノートを、梨花は手形がつくほど握りしめた。  彼女が狭霧に、他人の宿題を引き受けるのはもうやめろと言ったのは昨日だ。そして今日、彼は――。 「山本。剣道強いんだってな?」 「あぁ? はい。イチオー中学では県大行きましたしー?」  気に食わないしゃべり方だ、と思いながら、梨花はへえ、と頷いた。 「なぁ、あたしと勝負してくんない?」 ―――――― ふらふらの身体で体育館に辿り着くと、奥の方には道着姿の人だかりができていた。剣道部の全員が、入ってきた狭霧に背を向ける形で奥を見据えている。
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