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道着と防具を剣道部に返した梨花は、その足で校庭を横切り畳ばりの道場に向かっていた。そこでは、柔道部と空手部が一緒に部活をしているのだ。そして残り二冊のノートの持ち主も、この中にいる。
「ま、待ってくださいよ」
ふらふらの足で追いかけてきた狭霧を、梨花は振り返った。
「保健室で寝てろよ」
「居ずらいですって。貴女にぶっ倒されたひとも、保健室に運ばれちゃいましたし」
ああ、確かに、と、梨花は無邪気にからから笑う。
「じゃあついて来い狭霧。あと二冊残ってるからさ」
ノートを翳(かざ)して、梨花は不敵な顔をする。これはどれだけ止めても無駄だろう。ため息をつく狭霧を置いて、梨花は道場の扉を堂々と開けた。
「たのもう!」
どこの道場破りだ、という突っ込みはなしにして、狭霧もそのあとに続く。
手近な柔道部の女子をとっ捕まえて身ぐるみを剥い……ではなく、穏便に柔道着を借りた梨花は、長い髪をポニーテールに結い上げた。
柔道部一年の渡辺祐樹を相手に、先程の条件で試合を申し込んで開始する。
開始直後、いきり立って掴みかかってきた渡辺の両肘の上を外側から掴み、梨花は華麗に足払いをかけた。渡辺はストンと尻から畳に転落し、わけもわからぬうちに出足払いで一本を取られた。
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