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養護教諭に忙しくさせてすみません、と謝りたいが、確実に保健室行きがもうひとり増えるだろう。こればかりは決定事項だ。
柔道着も空手着も大差はない。梨花はそのまま最後のひとり、小川洋平に試合を申し込んだ。そして話を通し一旦狭霧の隣に戻ってきた梨花は、明らかに様子がおかしかった。
「梨花?」
「狭霧。アイツぶっ殺していいか?」
「駄目ですよ。何を言ってるんですか」
止めなければやりかねない梨花に、狭霧は慌てふためいた。
「何があったんです?」
「『オレが勝ったら安曇(あずみ)はサンドバックだ』、だとさ」
「それはまた……」
うん、言うだろう小川なら。彼には散々殴られたし、蹴られた。暴行が周囲にばれないように顔だけは潰されなかったが、身体はあちこち痛い。この上サンドバックは嫌だなぁと思いながら、安曇狭霧は苦笑した。それを見咎めて、梨花は眉間にしわを刻む。
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