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「どうして笑ってられる」
「さあ。ぼくは、結構自分に無頓着ですからね。死にかけることには慣れてますし」
穏やかに笑う顔は、あどけなさの残る少年のそれだ。それなのにその瞳に滲む光は、まるで余命幾許(いくばく)もない病人のよう。
狭霧は、生まれたときから死にかけていた。予想外の早産だったと聞いている。それに幼い頃わかったことだが、彼は肺も悪いのだ。
当然のように身体が弱く、高校生になるまでの間に何度病院の世話になったかわからない。
死にかけることには慣れている。それは嘘ではないのだ。けれど、
「そんなことに慣れるな。ボケナス」
乱暴に言い捨てて、梨花は最後の試合に臨んだ。
「今のあたしは機嫌が悪い。悪いけど瞬殺でいくよ」
だから殺しはまずいですって、という狭霧の心の叫びは届かぬまま、試合開始。
瞬間、
「オラァ!」
少女らしからぬ声を上げて、梨花の身体が弾丸のように弾けた。
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