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「いつか死人出ますってそれ。まあ強度的に、ぼくが死ぬ方が早いでしょうけど」
「……そん時は、三人まとめて血祭りだ」
ひと際低い声で、梨花は物騒な宣言をした。
やれやれと息をつく狭霧は、この幼なじみがいつか新聞の一面を飾らないようにするにはどうすればよいか、考えをめぐらせる。
黙考する彼は学年トップの秀才だ。身体が弱い分頭を鍛えようと努力した結果そうなった。けれど、優等生の彼でも、今身近にある大切なことだけは理解できていないのだった。
「狭霧」
「はい? ――っ」
顔を上げた瞬間、彼は痛いほどの力で抱きしめられた。
暮れなずむ夏の夕日の中、帰り道をショートカットしようと歩いていた公園の中にはふたりしかいない。ふたつの影がひとつになっても、見咎める者はいなかった。
絶句して鞄を手放した狭霧の耳元に、梨花はそのまま唇を寄せる。
「言うな。もう」
「梨花?」
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