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爪が食い込むほど丸めた三冊のノートを握りしめて、梨花はひとりで校舎内を歩いていた。狭霧は自分の鞄と一緒に保健室に置いてきている。
廊下を歩く梨花は、誰が見ても明らかに憤慨していた。癖のある長い黒髪をなびかせて、武人もかくやという雄々しさで闊歩しているのだ。生徒たちが皆無言で道を開ける。
梨花が行き着いた先は体育館。蒸し暑い中、色々な運動部がごった煮状態で部活をしていた。その奥の方、バチバチと派手な音を立てて竹刀を鳴らしている剣道部に、彼女は目を止める。そしてまっすぐそこに向かい、顔見知りの女子部員に声をかけた。
「山本一樹って一年生、いる?」
――――――
止めてくれるな養護教諭、という心境で、狭霧は保健室を飛び出した。身体はまだ痛むが、もっと言えば梨花に投げられた際に打った箇所が本っ当に痛むが、今はそれどころではなかった。
「梨花……」
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