梨花、乱舞

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 止めないと。ノートの持ち主である三人は、全員が武道系の一年生だ。多分容赦はしてくれないだろう。 ―――――― 「悪いねぇ。稽古中に呼び出してさ」  体育館の隅で、梨花は山本一樹に一冊のノートを突き返した。それを見て、道着と防具姿の山本は面倒臭そうな顔をする。  小手のはまった手で器用にノートを受け取る彼は、梨花よりも背が高い。同じ一年生でも小柄な狭霧とその他では体格が異なる。けれど、梨花は臆することなく冷たい目で山本を見上げた。 「弱いものいじめって楽しいわけ? よってたかって宿題押し付けて、断られたらボコボコにしてさぁ」  間伸びした明るい口調だが、その実梨花の瞳は冴え冴えとして笑っていない。  それを感じてか、山本は言い訳を始めた。
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