107人が本棚に入れています
本棚に追加
止めないと。ノートの持ち主である三人は、全員が武道系の一年生だ。多分容赦はしてくれないだろう。
――――――
「悪いねぇ。稽古中に呼び出してさ」
体育館の隅で、梨花は山本一樹に一冊のノートを突き返した。それを見て、道着と防具姿の山本は面倒臭そうな顔をする。
小手のはまった手で器用にノートを受け取る彼は、梨花よりも背が高い。同じ一年生でも小柄な狭霧とその他では体格が異なる。けれど、梨花は臆することなく冷たい目で山本を見上げた。
「弱いものいじめって楽しいわけ? よってたかって宿題押し付けて、断られたらボコボコにしてさぁ」
間伸びした明るい口調だが、その実梨花の瞳は冴え冴えとして笑っていない。
それを感じてか、山本は言い訳を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!