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立ち上がろうとした奥さんが、 「あっ…」 小さく声を上げていた。 「どした?」 愛おしい人が心配で仕方ないって顔をした課長が 「どっか打った?病院行くか?」 って声を掛けていたが、 「ダメだよ。優介さんは乾杯の挨拶する約束でしょう…」 そう言った先から、奥さんの顔色が見る見るうちに真っ青になっていく。 急に心配になって課長の背後まで階段を降りると、 もう一度成瀬さんに睨まれて 「課長…課長はいないわけいかないっしょ。俺…ちょっと病院に送ってきます。怪我してるといけないから… すぐ帰ってきますよ。披露宴までまだ時間ありますしね…」 成瀬さんはそう言ったかと思ったら、 「失礼。」 そう言って課長の奥さんをお姫様抱っこまでして、 式場のスタッフにタクシーを頼んでいた。 「悪いな…頼む…」 課長の力ない声が耳に届いたのか、 「ごめんなさい。すぐ帰ってきますね。」 って、叱られた子どもみたいな顔をして奥さんがそのまま、階段を下って行った。 成瀬さんに抱っこされたまま。
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