致し方ない転生

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 「ふう、、、疲れた」  時間軸は現代、所在は日本。午後10時過ぎ、やっと今日の仕事も終わりをつげた。 仕事を終え自分の住む4帖1間の狭いアパートへと帰宅した。  築40年と些か古いこのアパートではあるが、4年前田舎から出てきた俺には新たな住居、そして憧れだった一人暮らしに心が躍っていたのを覚えている。  パチリ、と蛍光灯をつける。  男の一人暮らし、やはり部屋は汚く足の踏み場がやっと確保されるほどの乱雑さ。 ここで掃除をしてくれる女性でもいればいいのだが、彼の容姿はさほどいいものではないが故の独身なのであろう。  ふと、全身鏡に目をやる。前髪が軽く額にかかる程度の黒髪、無個性と友人に言われた茶縁の近視用眼鏡。身長は180あるかないか、多少筋肉は着いてるものの一向に引き締まらないお腹。それは彼が座ると2段の肉座布団になり得るほどの重圧。  そんな容姿を自分でも嫌になってるらしく、それが自信を無くす理由になっていた。    「今日の賄いは美味しかったな。でももう少し生姜を効かせてもよかったかな?」  人間。此の生物が誕生して数千年。進化の過程で不変とされてきた’三大欲求’。 一角、食欲を商売としている料理人。それが彼の正体である。  ダイエットにも励んだが、それに呼応するかのごとくグウ、と鳴る自身の胃腸。 結局リバウンドという結果を招いてきたのだった。
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