知らない10年間

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  「俊の幼馴染みらしいわね?」 「そう、ですけど……。」 突然とぶつけられる質問にただ頷くことしかできない。 堂々としている奈多良さんの態度に、困惑してしまう。 奈多良さんは、いったい何を言いにきたのだろうか。 「あたし、俊の恋人なのよね。」 「……え?」 ぽかんとして、奈多良さんを見る。 口が空いていて間抜けな顔になっていると思う。 だけど、奈多良さんの言った言葉を理解できなくて、それどころではない。 恋人? 俊くんの? 昨日の俊くんの態度はそういうことだったからなの? 「記憶喪失であなたのこと忘れてるみたいだし、今さら俊に近づかないでくれる?」 「あ、で、でも……っ」 「なに? 俊にはあたしっていう彼女がいるんだから、べたべたされるの嫌なのよね? それぐらい、女の子なんだからわかるわよね?」 わかるわよねって……。 そんなこと言われても。 私には、俊くんに思い出してもらわないといけない理由があるのに? 近づかないでって言われても、じゃあ、どうして俊くんは言わないの? 一緒に帰ってくれたり、寄り道したり、手を繋いだり、ヤキモチ妬いてくれたの? 「そんな、でも、その……。思い出してもらわないなんて、困ります……。」  
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