ツギハギの男

2/20
352人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
閑散とした夜の街を、1人の男が走る。雨上がりの道には所々に水溜りができていた。 「はぁっ、はぁっ!くそ!」 男は走りながら振り返る。 追ってくる・・・奴が!! 後ろから迫り来る黒い影。 男は狭い路地裏に逃げ込む。 「はぁっはぁっ!!」 男は無我夢中で走る。 必死で逃げる。 路地裏は迷路のように入り組んでいて、すぐに迷ってしまいそうだった。 角を曲がった、そこは・・ 「!!!」 行き止まりだった。 「そんな!」 うろたえる男。 その間にも、「追跡者」は彼の元へ迫っていた。 「アルフレッド・マーカス。」 暗闇から、低い男の声が聞こえた。路地は暗いので、よく見えないが、そこに誰かが立っているのがわかる。 「マフィアのボス・・・やっと追い詰めた。悪いが、お前には死んでもらう。」 何者かは一歩一歩近づいてくる。 アルフレッド・マーカス。 そう呼ばれた、追い詰められた男は、必死に叫んだ。 「な、何者なんだ!?お前は! 私の優秀な部下を全て・・! 誰の差し金だ?え?言ってみろ!」 「お前が、金の為に殺した男の家族だ。・・俺はそいつらに依頼を受けた。」 男がそう言うと、男の手元で何かが輝きを放つ。 そして次の瞬間、男の手にはピストルが一丁握られていた。 「ま、まて!やめろ!! 金なら幾らでもやる!だからやめてくれ!!」 叫ぶアルフレッド・マーカスの言葉を無視するかのように、男はピストルを構える。 そして静かに言った。 「悪いが、そんなものには興味はない。 だが、俺が何者かくらいは教えてやろう。 俺はツギハギ。断罪者ツギハギだ。」 次の瞬間、「ツギハギ」は引き金を引く。 一つの銃声が、路地裏の静寂を切り裂いた。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!