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神崎は真横にきっちりとじた口をゆっくり開いた。
「あんた、ことりちゃん」
なんでちゃん付けなんだよ、しかも名前ちがうぞ、と反論しようと思ったがすぐに神崎は言った。
「しゃべらないで。といってもしゃべれないと思うけどね。ことりちゃん。」
大地の口に人差し指をピトッと押し付けながらそう言った。
何言ってんだ、と言った。
‥‥つもりだったが声になっていない、というか音すらでていなかった。
「!」
まるで鼻下から顎にかけてぽっかり無くなったような気がしていた。
手は動く。
口を探す。
とはいえ、当然の如く口はあった。
あった、という表現をするのは的確でないかもしれないが、そんな感覚だった。
そうしている内に、神崎は小さな声でつぶやいた。
「踏切、居たでしょ。」
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