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賑やかな街道のとある一角、町の雰囲気とは全く違う閑散とした場所で星空を眺める少女。
決して綺麗とは言えない身なりに、土や泥で汚れた手足。
それは、華やかな街道を我が物顔で闊歩する女達とは明らかに違っていた。
まだ少し肌寒い時期にひとり佇み空をじっと見つめる。
「綺麗な星空。」
見上げた空の色と同じ瞳にたくさんの星を写し、嬉しそうににっこりと笑うと視線を前に向けて止めていた足を再び動かす。
少女は通いなれたように道なき道を歩く。
すると暗闇のなかにひっそりと佇む錆びれた物置小屋にたどり着いた。
少女は躊躇うことなくその小屋に入っていくと、中にあった薪を持てるだけ持って小屋を後にする。
そしてもと来た道を辿る。
次第に目の前に見えてきたのは少女には見慣れた豪華絢爛なお屋敷。
先ほどまでの閑散とした雰囲気とは一変して、その屋敷に一歩足を踏み入れれば賑やかな街道の空気に呑まれていく。
ずらりと並んだ障子からこぼれる明かりと、鳴り響く三味線と太鼓の音、そして人々の楽しそうな笑い声。
少女はその様子を、うらやましそうな目で見ながらも、その横を通りすぎていく。
そして、彼女は熱気が漂う土壁の小屋の勝手口へと向かった。
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