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「ついてるな……」
だが葉月君は彩乃の質問には答えず、男の霊に目をやりながら独り言のように呟いた
彩乃は驚き、動揺しながらも顔に紅葉を散らす
葉月君は『憑いている』という意味で言ったのだろう
しかし、彩乃は『運が良い』と受け取ってしまったようだった
天然のタラシーー
「まあ……可愛しね。君、恋人はいるの?」
「えっあ……いません」
「じゃあまだ大丈夫だね」
葉月君がサラリとそんな事を口にすると、彩乃は更に赤い顔を茹でダコに変える
何よ……この甘い空気……
しかも……
「何でそんな事聞いてんのよ!!」
私は葉月君の彩乃に向けた言葉に苛々と顔をしかめる
一方葉月君は、私を無視したまま空のコップに買った缶のコーヒーを入れた
そしてその中に、角砂糖とシロップを大量に落とし始める
ブラックコーヒーが次第に白く染まっていく
見た目がもう不味そうで、具合さえ悪くなってくる
もはや何かの罰ゲーム並みの代物だ
本来なら角砂糖とシロップの多さにツッコミを入れているところだ
だが、頭に血が上ってしまって、そんな気分ではない
「あのっ!! 是非よかったら携帯のメールアドレスと番号、交換していただけませんか!?」
頬を上気したさせたままで、彩乃は照れを隠すような勢いで声を張り上げる
葉月君が作り出した白いコーヒーは、目にも入っていないようだ
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