正体

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「あれは何?」 葉月君は彩乃の言葉を聞いていなかったかのように、 周囲の客とメイドのやり取りをぼんやりと見ながら言った 「萌の萌え萌え、ちゅ・う・にゅ・う、だにゃ」 目線の先では、語尾にハートが付きそうな声で、メイドが客の飲み物に可愛らしい動作をしている 「あれは飲み物を更に美味しく、楽しんでいただくための魔法なんですよ」 彩乃はニッコリと微笑みながらも、 さっきの話の返事をもらえなかった落胆の色が隠しきれていない 「ふうん……。 僕もやって欲しい気がするけど、いいや。帰ってから自分で試してみるよ」 「「え?」」 葉月君が何食わぬ顔で発した言葉の意外さに、私と彩乃の声が重なる い、今なんと……!? そんな二人をよそに、葉月君はさっさとカプチーノと、白く濁ったコーヒーを飲み干した 気持ち的に味が良くなるという意味だろうが、 葉月君はちゃんとわかっているのか、全く彼が考えている事がわからない 「ごちそうさま」 それだけ言うと、葉月君はテキパキとした動作でレジにお金を払い、店を後にした 彩乃は呆然として、葉月君を目で見送っている
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