正体

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「ところであれは……どうするの? 私たち、カフェから出てきちゃったけど……」 私は勘違いした事を悟られまいとして、 大袈裟なくらいの考える素振りをし、深刻な顔でたずねる 「そのままにしておく」 葉月君は目を私からそらすと、飄々とした声で言った そのままって……は!? 「あのメイドさん、憑かれてるんだよ? 見捨てるの!?」 再び憤りを感じ、思わず声が大きくなってしまう 男の霊がべったりついてくるだなんて、見えてないとはいえ気の毒すぎる 葉月君の頬が微かにピクッと動いた そして途端に足を止める 「随分な言いようだね。あの霊は後に消える。そのままにしておけば害はないよ」 葉月君は少しだけ眉間にシワを寄せて、鬱陶しそうにしている 「そうだとしても、それまであのまま!?」 「仕方ないだろ。しかも今回の場合は被害が軽く済む方だよ」 やれやれといった風に、葉月君は溜め息をついた 彼の態度にカチンとくる 「被害が少ない!? 特に女性にとってどんなに嫌な事かわかってるの!?  あのメイドさんに憑いていた霊は、メイドさん家の中でもべったりなんでしょ!? プライバシーも何もないんだから!!」 一息に言った途端 鋭い光を帯びた葉月君の眼が私に向けられる 心臓が一瞬はねた 葉月君に向けた怒りが次第に恐怖に変わっていく 出ようとしていた言葉も飲み込んでしまった まるで蛇に睨まれた蛙だ
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