6人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
「ところであれは……どうするの? 私たち、カフェから出てきちゃったけど……」
私は勘違いした事を悟られまいとして、
大袈裟なくらいの考える素振りをし、深刻な顔でたずねる
「そのままにしておく」
葉月君は目を私からそらすと、飄々とした声で言った
そのままって……は!?
「あのメイドさん、憑かれてるんだよ? 見捨てるの!?」
再び憤りを感じ、思わず声が大きくなってしまう
男の霊がべったりついてくるだなんて、見えてないとはいえ気の毒すぎる
葉月君の頬が微かにピクッと動いた
そして途端に足を止める
「随分な言いようだね。あの霊は後に消える。そのままにしておけば害はないよ」
葉月君は少しだけ眉間にシワを寄せて、鬱陶しそうにしている
「そうだとしても、それまであのまま!?」
「仕方ないだろ。しかも今回の場合は被害が軽く済む方だよ」
やれやれといった風に、葉月君は溜め息をついた
彼の態度にカチンとくる
「被害が少ない!?
特に女性にとってどんなに嫌な事かわかってるの!?
あのメイドさんに憑いていた霊は、メイドさん家の中でもべったりなんでしょ!?
プライバシーも何もないんだから!!」
一息に言った途端
鋭い光を帯びた葉月君の眼が私に向けられる
心臓が一瞬はねた
葉月君に向けた怒りが次第に恐怖に変わっていく
出ようとしていた言葉も飲み込んでしまった
まるで蛇に睨まれた蛙だ
最初のコメントを投稿しよう!