正体

13/14
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
「僕ら案内人はね、霊を成仏させるのに手段は選ばないんだよ」 葉月君は私に鋭い視線を向けながら、いつもより低い声で静かに言った 「仮にだよ。 人を殺したいくらい恨んで、 この世に留まっている霊がいたとする。 僕ら案内人はその霊を成仏させるために何をすると思う?」 ーー僕ら案内人は手段を選ばない 彼は確かにそう言った 私の胸に、嫌な予感がよぎる 二人の間に冷たい風が吹き抜け、鳥肌が立った 葉月君は鋭い眼とは裏腹に、淡々とした感情のない声で言葉を続けた 「ーー殺すんだよ。その霊に恨まれている対象の人間をね」 途端、私は頭を鈍器で殴られたような感覚に襲われた 衝撃で視界がゆらゆらと揺れる 殺すーー その言葉だけが頭の中でこだました じゃあ葉月君は……人を殺した事があるの? 真っ先に脳裏に浮かんだその問いを、聞けるはずがなかった
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!