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「ねえ」
私は葉月君の声にビクッと肩を揺らした
異常な程に反応し、顔がどうしても強張ってしまう
「ところで君はいつまでついてくるの?」
そう言った後、葉月君はだるそうに頭を掻き回した
恐怖感で支配していた葉月君の威厳に満ちた眼
それはいつの間にか、どこかへ消えてしまったかのようだ
その様子から、張り詰めた空気が和らぐのを感じた
何とも言えない解放感に満たされる
「……今日は帰るわ」
「そうしなよ」
多少ぎこちない私を全く気にもしていないようで、葉月君は大きな欠伸をする
そして重そうな瞼をこすりながら、歩き出して行った
既に日が沈みかけている
帰るとは言っても、家族はお帰り、と言ってはくれない
帰り遅かったね。どうしたの? と心配してもくれない
寂しさと悲しい気持ちを心の中で溶け合わせながら、去っていく葉月君の背中を静かに見送った
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