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「き、貴様!こんな所で何をしている!?」
少女は声を荒げる。
それは怒りでは無く、焦燥が感じられる声だ。
「あ、お、俺は、なんか迷っちまってよ!」
浩一はとっさに返した。
子供の言い訳の様に。
その瞬間火の玉が飛来し少女に当たり、大爆発した。
「あっちぃ!!!!!!!お、おい!大丈夫かよ!!」
目の前で起きた事実に目を丸くしながらも、浩一はまたとっさに声を発した。
爆煙が晴れた時、そこには、肌から煙をあげる少女が歯を食いしばり、かがんでいた。
「樹詠、瞳に映りし七色の葉よ、我ここに力を貸し願わん!」
少女は両手を前に突き出し、呪文だろうか、言葉を紡いでいる。
「九頭竜葉!」
少女が言い放つと、彼女の背の森から大量の葉が飛び出し、宙で竜の形を作り上げる。
そしてその竜は、低空を飛び、浩一から顔がぼやけて見えるくらいの場所にいた2人の人間を襲う。
男の悲鳴が小さく聞こえた気がするが、その竜が動くたびに響く葉の音で現場の声など聞こえない。
その竜はやがてただの葉になり、
緑の大地へ落ちた。
そして緑の大地には無惨な血痕とわずかな肉片が散らばっていた。
浩一は人が目の前で傷付いたり、死んだりするのを初めて見たので動揺を隠せないでいる。
「な、なぁ君、今のは君がやったのか?それにここは何なんだ?」
「ここは戦場だ、どこの村から来た?」
少女は飽きれた様な言い方で浩一に質問する。
「む、村?俺は…トウキョウに住んでるぞ?」
浩一はまともに答える。
「そんな場所聞いたこと無いな…ふふっ」
少女はバカにした様な笑い声を上げる。
「トウキョウ知らないのか?」
それでも浩一は、まともに質問してみた。
「それ、本気か?…っ!お前…まさかっ!?」
少女は少し考え、ハッと何かを思い出した様に言い、目を細めて浩一を見つめた。
「な、なんだよ?」
少女の瞳に見つめられ、浩一の動揺は大きくなる。
「まさか…お前…迷人か?」
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