1章「未だ知り得ぬ、異なる地」

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「き、貴様!こんな所で何をしている!?」 少女は声を荒げる。 それは怒りでは無く、焦燥が感じられる声だ。 「あ、お、俺は、なんか迷っちまってよ!」 浩一はとっさに返した。 子供の言い訳の様に。 その瞬間火の玉が飛来し少女に当たり、大爆発した。 「あっちぃ!!!!!!!お、おい!大丈夫かよ!!」 目の前で起きた事実に目を丸くしながらも、浩一はまたとっさに声を発した。 爆煙が晴れた時、そこには、肌から煙をあげる少女が歯を食いしばり、かがんでいた。 「樹詠、瞳に映りし七色の葉よ、我ここに力を貸し願わん!」 少女は両手を前に突き出し、呪文だろうか、言葉を紡いでいる。 「九頭竜葉!」 少女が言い放つと、彼女の背の森から大量の葉が飛び出し、宙で竜の形を作り上げる。 そしてその竜は、低空を飛び、浩一から顔がぼやけて見えるくらいの場所にいた2人の人間を襲う。 男の悲鳴が小さく聞こえた気がするが、その竜が動くたびに響く葉の音で現場の声など聞こえない。 その竜はやがてただの葉になり、 緑の大地へ落ちた。 そして緑の大地には無惨な血痕とわずかな肉片が散らばっていた。 浩一は人が目の前で傷付いたり、死んだりするのを初めて見たので動揺を隠せないでいる。 「な、なぁ君、今のは君がやったのか?それにここは何なんだ?」 「ここは戦場だ、どこの村から来た?」 少女は飽きれた様な言い方で浩一に質問する。 「む、村?俺は…トウキョウに住んでるぞ?」 浩一はまともに答える。 「そんな場所聞いたこと無いな…ふふっ」 少女はバカにした様な笑い声を上げる。 「トウキョウ知らないのか?」 それでも浩一は、まともに質問してみた。 「それ、本気か?…っ!お前…まさかっ!?」 少女は少し考え、ハッと何かを思い出した様に言い、目を細めて浩一を見つめた。 「な、なんだよ?」 少女の瞳に見つめられ、浩一の動揺は大きくなる。 「まさか…お前…迷人か?」
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